SMBC日興証券は、社員がプロンプト(AIへの指示文)を書かなくてもいい社内AIツールを作って、年46万時間の業務削減を達成していた。自分の毎朝のブログ執筆を振り返ったら、似たようなことをすでにやっていたと気づいたので、その中身と、まだプリセット化できていなかった作業をClaude Codeの「スキル」にした話を書く。
「プロンプトが上手い人だけ得をする」をやめた会社
個人のプロンプトスキル頼みだったAI活用を、ボタン操作だけで済む仕組みに作り変えた。
SMBC日興証券は2023年11月、チャット形式のAIツール「NIKKO-AI」を先行リリースした。ところがすぐに壁にぶつかった。使いこなせるかどうかが「社員一人ひとりのプロンプトスキルに大きく依存してしまう」という課題だ。プロンプトを書くのが苦手な人は、そもそもAIを使わなくなる。
2024年4月にリリースされた後継ツール「My Buddy」は、プロンプトスキルが不要な設計にした。機能ごとに入り口を分け、ユーザーは目的の機能を選んでボタンを押すだけ。プロンプトは裏側にあらかじめ組み込まれている。最も使われているのは議事録機能で、Teamsの書き起こしデータをアップロードするだけで、要約に加えてネクストアクションと未解決事項まで整理して出てくる。この仕組みを含む10種類の特化型AIツールの活用で、年間46万時間の業務効率化を実現した。
数字の大きさより、やり方に意味があると思った。「AIを使いこなせ」と社員に丸投げするのではなく、よく使う指示をあらかじめ固定して、呼び出すだけにする。個人の頑張りに依存しない仕組みにしたということだ。
自分もほぼ同じことを、フォルダ1つでやっていた
毎朝の記事執筆ルールを、Markdownファイル1枚に固定していた。
この副業ブログは、Claude Codeに毎朝「記事を1本書いて投稿して」と頼むだけで動いている。でも最初からそうだったわけではない。始めた頃は、頼むたびに次のような指示をチャットに書き直していた。
- 結論を1行目に書くこと
- 見出し(h2)の直後に、そのセクションの要約を太字で置くこと
- 数字は必ず強調すること
- 「〜できます」ではなく「〜した」で書くこと
- 専門用語には括弧書きで説明を添えること
この5項目を毎回書くのに約3分。抜け漏れがあって出力が微妙だと、書き直しの指摘にさらに2〜3分かかっていた。1日あたり5〜6分。年間だと20時間を超える計算になる。SMBC日興証券の46万時間とは桁が全然違うが、「毎回同じ指示を書き直している」という無駄の構造は同じだった。
良い例:ルールをファイル1枚にまとめておき、「これに従って書いて」で済ませる
悪い例:頼むたびに同じ注意事項をチャットに打ち直す
この副業ブログでは、記事のルールを1枚のMarkdownファイルにまとめて、Claude Codeが毎朝それを読み込む形にしている。だから今は、記事を頼むときに上の5項目を書く必要が一切ない。
プリセット化できていなかった作業を、スキルにした
ファイルを読み込ませる方式から、合言葉1つで呼び出せる方式に変えた。
ここで気づいたのは、記事執筆以外の作業は、まだその場でプロンプトを書き直していたことだ。特に週1回、その週の投稿を振り返って改善点を洗い出す作業は、毎回「過去1週間の投稿ログを読んで、良かった点と直すべき点を3つずつ挙げて」と打っていた。
これをClaude Codeの「スキル」という機能にした。スキルは、フォルダの中に1枚のMarkdownファイル(SKILL.md)を置いておくと、決めた合言葉を話しかけるだけでその指示一式を呼び出せる仕組みだ。
Claude Codeに「この作業のときはこの手順・この注意点で動いて」とあらかじめ教えておく設定ファイルのこと。以前は「カスタムコマンド」という別の仕組みだったが、2026年のアップデートでスキルに統合された。作業の種類ごとにファイルを分けておけるので、何個増えても呼び出す合言葉さえ覚えておけば迷わない。
実際に作ったスキルの中身(一部)
合言葉:「週次振り返り」
中身:post-log.mdの直近7日分を読む → 良かった投稿とその理由を3つ → 直すべき点を3つ → 来週試すことを1つ提案する、という手順を固定
作業自体は約15分で終わった。フォルダを作って、手順を書いたMarkdownファイルを1つ置いただけ。これで「週次振り返り」と話しかけるだけで、毎回書き直していた指示文がゼロになった。
注意点もある。プリセット化すると、その場の細かい要望を伝える手間が省ける代わりに、想定外の頼み方をしたときに柔軟に対応しにくくなる。毎回内容が変わる作業より、「型が決まっている繰り返し作業」から順にスキル化するのが向いている。
今日からできること
週に2回以上、同じ内容の指示を書き直している作業を1つ思い出す。
思い当たったら、その指示文をメモ帳やMarkdownファイルに1回だけ丁寧に書いて保存する。次にAIに頼むときは、指示を書く代わりに次のように投げるだけでいい。
「このファイルの手順どおりに進めて」
(保存した指示文のファイルを一緒に渡す、または内容を貼り付ける)
これだけで、書き直しにかかっていた数分が消える。SMBC日興証券がやったことも、突き詰めれば同じで、「毎回書く」を「1回書いて、あとは呼び出す」に変えただけだった。
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